雑感備忘録

文化と雑感を書いたりします。

2019.3.15 Base Ball Bear 「LIVE IN LIVE〜17才から17年やってますツアー」Zepp Diver City公演 感想記

※セトリを記載しながら書いていますので、未見の方はご注意を!

 

f:id:frtkays:20190317114754j:image

 

いつだって最新が最高、という言葉は、アーティストのリリースやツアーがあるたびにこすり倒されてきたフレーズな気がするけれど、

一昨日のBase Ball BearのZeppDC公演は間違いなくそれであった。

体感として、いままで観たライブの中で最高のものだったし、この先も忘れられないものになると思う。

 


先週末の公演延期という事態を踏まえて、

ファンは固唾を飲んで公演の実施可否を案じていた。

実際開催のアナウンスが小出からされても、本当に大丈夫なのかと疑ぐるほど。

こんなに緊張するライブもそうそうない。


こちらの不安をあっさりと払拭するほどに、

小出曰く「喉はぷるんぷるんになった」というくらい快調、なんなら後半にかけては絶好調であった。

花粉症デビューしたようで、鼻声にはなっていたもののそれもまた一興。


今回のツアータイトルからもわかるように、10年以上前にリリースされたアルバム「十七歳」と、最新EP「ポラリス」を中心に組まれたセットリストは

バンドの歴史と成長をなぞり振り返るとともに、

ここからが新しい彼らになっていく予感と期待を存分に感じさせるものだった。


「17才」はまさしく今回のツアーアンセムと言っていいだろうし、

二周目の青春に到達している彼らが奏でることにより今まさにその世代を生きる人々を

あたたかく見守るようなニュアンスがある。

そこから最新曲「試される」が奏でられ、ギアがぐっと上がる。

最初に名古屋で聴いた時から一層厚みが出ており、作曲に名を連ねている関根のベースがうねりを伴いオーディエンスの感情を煽る。

今回大きい会場の醍醐味とも言える照明のバラエティの豊かさをこの曲では特に感じて、

サビでスポットの束が左右にゆっくりと、フロア全体をなめるようにふられる演出が

まさに「試されている」感覚を想起させた。

 


第一声の挨拶が「ご心配おかけしました!」というもので、本当に良かった。

後々ツイッターを漁っていたら、やはり遠征組は怒っている人も結構いて、

それは運営側の判断タイミングもあるけれど小出へのリプで苦言を呈している人もいた。

でもそこで謝るのは違う気がしていたし、案の定そうではなかったので

やはり小出は信頼できるなと思った。(どの立場)

 


「ヘヴンズドアー・ガールズ」に続き

「抱きしめたい」はとても久しぶりに聴いたけれど、湯浅のパートをそのまま弾くのではなくあえてビートをさらすようにしていて、

音の空間を堀之内のエモーショナルな手数とアレンジが埋めていた。

なくなった部分を必ずしも同じ素材で補う必要がない、というスタンスは大変彼ららしく、

曲の印象もビターなものになり、新たな方向性を開花させていた。

個人的にはこの春先にこの甘ったるい曲を聴けたのも大変満足でした。


早くライブで聴きたいと思っていた「Flame」はテンポが走ることもなく、とても大切に演奏されていた印象。

小出と関根のハーモニーも艶やかで、あぁとっても上質…!と豊かな気持ちに。

(今回2階席で見ており、左斜め前にMVのキャストさんが座っていてそれもまたオツなもんでした)


「Transfer Girl」では関根のチャップマンスティックが活躍し、

スティックの音色によりあの水面がたゆたう風景がより立体的に浮かび上がるようになっていた。

スティックはギターとベースの音を一緒に出せる便利楽器的な側面もあると勝手に思っているのだけれど、

ギターソロのタイミングで小出の方を向いて構えていたら関根側から聴こえてきてたまげたものである。

 


これはとっても個人的なイメージの話だけれど、

関根にとっての湯浅という存在もある意味で特別だったと思うし、

ほかの野郎2人とはまた違った距離感で接していたのだろうと思っている。

高校生の時湯浅がバンドの練習に来なくなったことを、関根が自分のせいだと思い込んで泣いてしまったのを小出がなだめた、というエピソードがそう思わせるのかもしれない。

(何故か妙に忘れられない話なんですけど記憶違いだったらすみません)

湯浅が抜けた時、関根は多くを語らなかったし、ともかくフルカワさんへの感謝をブログで綴っていたのも印象的だった。


そんな妄想的なバックボーンを考えると湯浅が弾いていたパートを関根が弾く、ということが、胸がきゅっとなるような感覚をおぼえ、

歌詞の世界観とも相まって号泣していたのでした。


中間のMCでは過去の話はしきってしまったから未来の話をしようという

保険のCMかとつっこみたくなるような展開であった。

(堀之内がぐだぐだと反対するのに対し小出が「いいからやってみようよ!」と寄りきるがこの二人らしい)

最近の関根から感じる、なんだか異質な人になりたがってる感が表出するような未来図が大変微笑ましかった。


こんなふうにやってきて、十七歳の中で持て余していたけれど

いまだったらこんな感じで大人っぽくできる

という一言から始まった「FUTATSU NO SEKAI」は

いままでほとんどちゃんと聴いたことがなかったのだが今のモードで聴くと大変かっこよく、再録したほうがいいのではと思うほど。

小出のギターがバキッと立つ裏で、

関根がジャジーな展開でソロを指弾きし

堀之内が軽やかに、時におかずも入れながらテンポを運ぶ。


タフな印象の余韻をそのままに「PARK」へ。

小出のラップもオールドスクールなフロウが最高に決まっており、

歌、ベース、ドラムでばっちり成立してしまう。本当にかっこいい。(普通の感想)

特に関根のベースが自信に満ち溢れており、見ている側も誇らしい気持ちになれる。


そこから「初恋」に展開していくのがとても意外だったのだが、

フロアの盛り上がりは最高潮に達しており、

まだこの曲に馴染めていない私は、その光景で

この曲に対する本人たちとファンの想いを改めて思い知らされることになった。


最後のMCはたまにある

まとまらないけど大事なこと言っているモードで、

でもそれは『ポラリス』のリリースでしっかり伝わっているよ、と応えたかった。

自主レーベルを立ち上げたことで、Base Ball  Bearという、もはやビジネスの母体になった集団を引っ張っていくのは

まず小出、堀之内、関根の三人である、ということ。

それを自分たちでは自覚しているし、2019年はそのスタートの年になること。

ここからが本当に新しいモードに入っていく、そのためにまず自分たちが先陣を切っていくということ。

そんなような趣旨だった。

ファンとしてはその想いを『ポラリス』のモードで受け取れていると思うし、

そんなことをわざわざMCで言う小出の懸命さが嬉しくもあった。


そこから入る「ポラリス」はどうしたって感情的にならざるを得ない。

オーディエンスも待ってました!と言わんばかりの受け入れ様だった。

三人がそれぞれを尊重し、そのうえで心からアンサンブルを楽しんでいることが溢れ出ていた。

自由で軽やかで、こんなに楽しい光景が目の前にあるなんて信じられないくらいだった。

書いてても泣けるわ。


ここから一挙にトップギアに持っていく。

「星がほしい」「青い春.虚無」から定番の「LOVE MATHEMATICS」、そして「The CUT」へ。

聞く度にめきめきとうまくなるこの曲、最初の驚きからすると、今では演らないことは考えられないくらいになっている。

ラップにドラム、そこにベースのフリースタイルと、

こんなことができるのは今の日本のシーンで彼ら以外いないのではないかと本気で思う。


そして最後に

「僕たちのこれまでのバンド人生はこんなふうに」と言う一言から始まる「ドラマチック」。

十七歳をリリースした時にはきっと想像していなかった未来に、彼らは今立っている。

この曲がこんなにも自分たちを表すことになるとは思ってもいなかっただろう。

伴った傷をきちんと糧にして活動してきたこの3年を昇華できるような曲を過去の自分たちが作っていたということ。

こんな素敵な巡り合わせがこの世界にあるだなんて、そんな最高なことがあるだなんて、

なかば信じがたいが目の前に間違いなくあった。

そんなことをしみじみと思わせる本編ラストであった。


アンコールはまさかの「協奏曲」。

「FUTATSU~」同様に持て余していた曲のようで、今妙齢になったからこそ上辺ではなく演奏できる一曲になっていると感じた。

喉の具合を鑑みればこれまであったWアンコールは期待できないかも、と思っていたら、

オーディエンスの要望にしかと応えるように三人が出てきてくれた。

この流れで演奏される「夕方ジェネレーション」は完全なる勝利であるし、

小出が

エビバデセイ ユウガッタ!!!

とシャウトするのも大変なる歓喜ポイントで、 三人もオーディエンスも最高潮、マックスに今この場を楽しんでいる多幸感で、会場が溢れていた。

ギター俺が炸裂したのもこの曲で、

じっくりと感情を煽るような展開がとてもセクシャルで

こうゆう時の小出は本当にかっこよく見える。(見たままの感想)

冒頭で小出が

「今日はめっ…ちゃ楽しみます」

と言っていたことが表出するかのように、

最後は小出、関根がそれぞれの愛機を高く持ち上げ、堀之内もまさにドラムゴリラになっていた。

(公式LINEで配信された画像の通りです)

こんな若手みたいなパフォーマンスするかね、と笑ってしまうくらい

本人たちがそれはそれは楽しそうで、今日来てよかったなと、その場にいた誰もが思ったことでしょう。

 


今回のツアー、個人的にはこの東京公演が初参加だった。

当初はこの「17才から17年やってます」というタイトルに日和っていて、

というのも、私が彼らに浸るようになったのはアルバム「二十九歳」からであり、

そのとき私もまさしく29歳でした。

その年齢からするとアルバム「十七歳」というのは、

彼らをスターダムにのしあげた記念すべき一枚だということは知ってはいたものの、

青春感溢れるその内容にちょっとした気恥ずかしさもあれば、

二十九歳とはまったく印象の違う作品でもあり、

いまいち耳馴染みのしない、しっくりこない感覚を覚え、聞き込んではいなかったのでした。


中盤でも書いたように、

彼らの長いバンド人生にてドロップされた曲のうち、特にファンからの思い入れの強い曲のいくつかに

まだまだ自分自身入り込めないような部分もあって

今回のツアーが十七歳も織り交ぜて構成されると聞いた時に

こうゆう自分が楽しめるんだろうか、と不安に思ったものです。

(そんなこともあって参加本数が少ない)


でもそんなことは杞憂であったと、終わった後に思い知らされました。

BBBはいつだって最新形で、その時々のモードで過去曲も楽しませてくれる、

信頼できるバンドです。

今回も、勝手に距離を感じていた私でさえその二時間をどっぷりエモーショナルに過ごしたのだから、

長く彼らを追い続けている人ほど、もはや天国の心地だったに違いないと思います。


フルカワパイセンが真性スリーピースバンドじゃん!と表現してくださったように、

皮肉なことに今この状態がオリジナルであったかのように、

アンサンブルがびたっとはまっている印象を受けた本公演。

個々の活動も目覚ましい昨今だけれど、

それらで培ったエネルギーを三人での活動に落とし込み、パンプアップしている様を見ると、

レーベルヘッドとしての責任感とたくましさを強く感じたものです。

今後の活動が明確に発表されているわけではないけれど、

ますます期待しかできないこのコンディションに、

こちらとしてもきちんと喰らいついていきたいなと

改めて思うような二時間でした。

 

 


17才
試される
ヘヴンズドアー・ガールズ
抱きしめたい
Flame
Transfer Girl
FUTATSU NO SEKAI
PARK
初恋
ポラリス  
星がほしい
青い春.虚無
LOVE MATHEMATICS
The Cut
ドラマチック

 

En.1 協奏曲

 


W en.夕方ジェネレーション